死後事務委任契約と行政書士がお力になれること

 

自身の周りに、葬儀や亡くなった後の様々な手続きを安心して任せられる方がいない場合や、なるべく家族や親族に負担をかけたくないとお考えの場合に利用できるものとして、死後事務委任契約と呼ばれるものがあります。

死後事務委任契約ではどのようなことを任せることができるのか、そしてそこで我々行政書士がどのようにお力になれるのかについて、説明したいと思います。

死後事務委任契約の概要

死後事務委任契約とは、自分が死亡後の事務をまかせたいと思う人(委任者)が第三者(受任者)に対して、死後の葬儀・埋葬等に関する代理権を与えて自分の死後の事務を委託する委任契約をいいます。

死後事務委任契約の対象となる死後事務の具体的内容は多岐にわたります。

以下が一般的な具体例です。

  • 死亡届けの提出
  • 健康保険や各種年金の資格抹消申請
  • 通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬等に関する事務
  • 菩提寺の選定、墓石建立に関する事務
  • 医療費や入院費用等の精算
  • 介護施設や老人ホーム利用料等の精算
  • 相続財産管理人の選任申し立て手続き
  • 遺品(相続財産に含まれないもの)の整理・処分
  • 公共サービス(水道・電気・ガス・電話)等の名義変更・解約
  • パソコン・スマホ(SNSアカウントも含む)の解約やデータ消去

一口に死後の事務といっても、一般的なものだけでも上記のように10種類ほどが挙げられます。

こうした事務は、家族が行うのが一般的ですが、家族がいない方や、なるべく家族に負担をかけたくないとお思いの方は、第三者と死後事務委任契約を結んでおくことでこうした死後事務を第三者に任せることが出来ます。

死後事務委任契約と遺言執行の違いとは

死後事務委任契約と遺言執行は、どちらも本人の死亡後に本人の意思を実現する手続きを進める点では同じです。しかし、この二つには大きな違いがあります。

まず、遺言書には、あくまでも本人の財産の承継に限られた内容しか書くことが出来ません。

たとえば、「不動産は○○に相続させる」とか、「預金1,000万円を△△に遺贈する」とか、本人の遺産の承継先を記載するのが遺言書です。

したがって、遺言執行者は、遺言書に定められた財産の承継を実現する手続きしか行うことが出来ません。

これに対して、死後事務委任契約は、遺言と異なり契約ですから、生前に(財産の承継以外のことを)契約で自由に定めることが出来ます。

たとえば、「葬儀は○○寺で行う、家族・親族のみ参列すること」、「埋葬はどうする」とか、「お墓はどこの墓地にしてほしい」とか、「自分のペットは○○に世話を頼みたい」とかを、契約で自由に定めることが出来ます。

これが死後事務委任契約のメリットといえる点です。

死後事務委任契約の注意点

死後事務委任契約の注意点は次のとおりです。

(1)遺言書と死後事務委任契約は公正証書とする

遺言書だけを書いても、死後事務については第三者にまかせるということは出来ません。また死後事務委任契約だけを作成していても、財産の承継に関しては対処できません。

そこで、自分の死後のことを安心できるように、かつ詳細に定めておく必要が生じます。

それには、遺言書の作成と死後事務委任契約の作成の両方を生前にすませておくことです。さらに遺言書と死後事務委任契約は共に公証役場で公正証書とするのが好ましいと思います。

もし、できるだけ家族に負担をかけたくはないとお考えの方なら、遺言書と死後事務委任契約の二つの作成を専門家(行政書士や弁護士)に依頼しておけば、自分の死後、誰にも迷惑をかける心配はありません。

(2)預託金を受任者に渡すこと

死後事務は、委任者が死亡すれば、すぐに開始します。

たとえば、遺体の引き取り・葬儀の手配・死亡届の提出等はすぐにやらなければいけません。

同時に葬儀・火葬・入院費用の支払いなど様々な費用が発生します。この費用を受任者が立て替えることは受任者にとって酷なことです。そこでこんな場合に備えて、一定額の金銭を死後事務委任契約時に委任者から受任者に対して預託する方法があります。

預託金は、葬儀の規模によって異なりますが、100万円~150万円程度が一般的なようです。

預託金については行政書士や弁護士のような専門家に死後事務委任契約を結ぶ場合も同様です。

契約時に預託金を渡して置き、もしもの時に備えてもらいましょう。

なお、預託金はあくまでも委任者のものです。受任者は自己の財産以上の重い管理義務を負います。

(3)死後事務はできるだけ少なくすること

死後事務は多岐にわたり、また煩雑なものも多く、その遂行はかなりの労苦を伴います。家族や親族に過度の負担をかけないよう死後事務はできるだけ少なくする配慮も必要です。

たとえば、契約は必要最小限のもの以外は解除する。SNSはすべて削除する。パスワード等はすべて分かるようにしておく、などが好ましいでしょう。

行政書士がお力になれること

「死後事務委任契約」という言葉が世間に認知されるようになったのは最近のことです。

テレビや新聞等のメディアで取り上げられるようになり、今後は更に死後事務委任契約を利用される方が増えていくものと思われます。しかし、死後事務委任契約に取り組む専門家が少ないのが現実です。

自分の死後のことを任せたいとお考えの方、私共~はその準備が出来ております。ぜひご相談ください。

では、今日はこれまでとします。

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