ペットは遺産相続できる?

 

犬や猫といったペットを飼っている方の中には、自分に何かあったときにペットがどうなってしまうか不安だという方も多いようですね。

ペットに財産を相続させてもペットは自分で自分を世話することができませんし、「誰かが面倒みてくれるはず」というのではちゃんと面倒をみてもらえるかわかりません。

そこで今回は、自分に何かあった後のペットの問題について考えてみようと思います。

ペットの法律上の扱いは?

これは頻繁にテレビなどでも紹介されているので、ご存知の方も多いのではないかと思いますが、ペットは法律上では「動産」として取り扱われます。

大切なペットが「動産」というのは心情的には割り切れないところもありますが、現状はこのような取り扱いになっています。

相続人の適格性という見地からも、相続人は自然人に限られていますから(民法889条・890条)、「動産」であるペットには相続権はありません。

そのため、直接ペットに財産を相続させるのはやはり不可能です。

ペットの世話をしてもらう契約

前述のようにペットに財産を相続させることはできませんし、仮にペットに財産を相続させることができたとしても、ペットに必要なのは財産ではなくお世話(飼育)をしてくれる人です。

そこでペットを飼育してもらえる民法上有効な手段を考えてみましょう。

負担付遺贈

負担付遺贈とは、遺言書に、飼い主が死亡後にペットの飼育を条件(負担)として財産の一部または全部を相続人に相続させる、または法定相続人(血族と配偶者)以外の第三者に贈与することを記載することです。

これは相手方の承諾がなくても飼い主の一方的な意思表示で可能です。

しかしこれには次のような問題点があります。

相続人または第三者は遺贈を拒否(放棄)することができます

受遺者(遺贈を受ける者)が「いきなり新しい飼い主に指定されても困る」と拒否されてはペットの行き場がなくなります。そこで飼い主はあらかじめ飼育を依頼する相続人または第三者の承諾を得る必要があります。

新しい飼い主がペットの飼育を放棄(ネグレクト)している場合

遺言書に遺言執行人が指定されているときは、その執行者が新しい飼い主に対して改善を請求することが出来ます。新しい飼い主がその請求に従わないときは、裁判所に遺贈の取り消しを申し立てることができます。

では、もし遺言執行者がいない場合はどうすればよいでしょうか?

この場合には、第三者が善意でそのペットを新しい飼い主から譲り受け飼育するとか、動物愛護目的のNPO法人が飼育を引き受けてくれれば良いのですが、いつもこうとは限りません。

悪くすれば、ペットが野犬(あるいは野良猫)化し、保健所によって殺処分という元の飼い主にとって悲しい結果になりかねません。

負担付死因贈与

負担付死因贈与とは、生前に飼い主が、自分の死後、ペットの飼育を条件に新しい飼い主に財産を贈与する契約です。契約ですから、飼い主と新しい飼い主との合意が必要です。

これにも問題点があります。

遺留分侵害額請求権が行使される危険性

兄弟姉妹以外の法定相続人(直系尊属、配偶者、子)は、遺言内容に関係なく、相続人の全財産の一定の割合を相続することができます。この「一定の割合」を遺留分といいます。

もし受贈者に贈与された財産が遺留分を侵害しているときは、遺留分侵害額請求権を行使され、ペットの飼育費が争いに巻き込まれる危険性があります。

このことは先述の負担付遺贈にも言えることです。受遺者に遺贈された財産が遺留分を侵害している場合、先ほどの遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。

契約の効力は飼い主の死後に発生する

もし飼い主が生前に病気になったり、認知症等でペットの飼育が出来ない状態になった場合はこの契約では対処できません。

負担付遺贈も遺言者の死後に効力が発生しますから、同じく対処できません。

このように民法上認められている負担付遺贈、負担付死因贈与契約では問題が多く、ペットの飼育には適しているとは言えません。

そこで活用できるのが「ペット信託」と呼ばれるものです。

ペット信託とは

ペット信託とは、「ペットのための信託契約」をいいます。家族信託の説明の際にも触れましたが、投資信託や信託銀行とは全く異なる民事信託の一種です。

そもそも信託契約とは、A(委託者)が自分の財産をB(受託者)に託し、Bは一定の目的に従って(利益を受ける者がいれば「受益者」)その財産を管理・処分することを内容とするAB間の契約です。「契約」ですからA・Bともに判断能力が必要です。

これをペット信託に当てはめるならば、次のようになります。

飼い主Aが今は元気だが、将来、病気や死亡等でペットの世話が出来なくなった時に備え新しい飼い主Bとの間で、ペットと飼育費を託す契約を結びます。

この場合Aが委託者・受益者でBが受託者となります。

これが基本型ですが、他のパターンも考えられます。

  1. 飼い主Aが自身を代表者とする資金管理会社を設立し、受託者Bはこの会社から定期的に飼育費を受け取る
  2. 新しい飼い主Bは、実際のペットの飼育を別の人や施設に委任し、自身は自己の財産とは分別された口座等にあるペットの飼育費を管理する
  3. 飼い主Aがペットの飼育をペット信託専門のNPO法人に依頼する

もし新しい飼い主(受託者)Bが適切にペットを飼育しない場合はどうするか?

このような場合に備えて、「信託監督人」を選任しておくという対策があります。

信託監督人は、受託者Bが、ペットの飼育や飼育費の管理を適切に行っているかをチェックして委託者Aに報告することが出来ます。

しかし、信託監督人を選任するかは全くの任意です。信託契約は当事者の信頼関係を基礎とする契約ですから、信託監督人の選任は慎重に行うべきでしょう。

ペット信託の委託先の選び方

先述のとおりペット信託においてはペットの世話をしてくれる人を指定して契約を結ぶわけですが、その委託先には主に以下のような選択肢があります。

家族

一番信頼できる委託先でしょう。しかし飼育費の管理にはあまり厳格さは求めないほうが好ましいでしょう。

友人

いうまでもなくペット好きで、世話をするのをいとわない人を選ぶべきです。

NPO法人

ペット信託専門のNPO法人に飼育を委託するのも安心でしょう。ただ専門のNPO法人は数が多くはありません。最適なNPO法人を見つけるまでは時間がかかります。

いずれにせよ大切なペットを託すわけですから、信頼できる委託先を選ぶことが大切です。

まとめ

外出すればペットを連れて散歩している方や車に乗せて出かける方をよく見かけます。人の寿命が延びるに連れてペットの寿命も延びてきました。

ペットの行く末を心配されている方も多いと思います。ペット信託は飼い主がいなくなり、世話をする人のいないペットのための有効な手段です。

しかし、信託契約ですので専門家(弁護士・行政書士等)に相談するのが賢明と思われます。

ASB行政書士事務所ではいつでもご相談に応じられる準備が出来ています。

では今日はここまでとします。

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