【行政書士インタビュー】これから遺言書を作る人が気をつけておきたいポイント

 

本日はよろしくお願いいたします。

-よろしくお願いいたします。

まずはじめに、日本における遺言書の作成件数などについて、どのような状況になっているのか教えていただけますか。

-遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類があります。

公証人連合会によりますと、公正証書遺言の作成件数は2014年~2019年までは10万件から11万件台でしたが、2020年(令和2年)は9万7700件と1万件以上減少しています(※公証人連合会HPの情報より)。

これは新型コロナ感染症流行の影響で、高齢者が外出を控えたためでしょう。

自筆証書遺言は、裁判所の検認の全件数がおよそ1万9千件(令和元年最高裁司法統計年報)で、この内100件程が秘密証書遺言ですから、1万8千件以上だと推測できます。

いまお話に出た自筆証書遺言と公正証書遺言ですが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。

-自筆証書遺言は、遺言者が全文と日付・氏名を自分で書き、押印して作成します。

公正証書遺言は、二人の証人の立ち会いのもとで、遺言者が遺言の内容を公証人に読み聞かせ、公証人がそれを筆記して公正証書による遺言書を作成し、公証役場に保管します。

自筆証書遺言は公正証書遺言と違って自分だけで作れるのは、まず遺言書を書いてみようと思う人にとっては取り組みやすい形式かと思います。この自筆証書遺言ですが、作るとき気をつけるポイントはどんなところにあるでしょうか?

-自筆証書遺言は全文を自分で書くという簡単な形式です。しかし、代理人は使えず、パソコン・ワープロも使えません。押印は氏名の他にも、文字の加除・訂正にも必要です。

これらのどれかに不備があれば、遺言書は無効になります。

この他にも自宅に保管していると紛失、改ざんの危険性もあります。また開封の際には家庭裁判所による検認が必要です。

最近、遺言書保管法が制定され、法務局で自筆証書遺言書を保管する制度が出来ました。

保管した場合には、紛失、改ざんの恐れはなくなり、また検認も不要になりました。この法律を作った趣旨は自筆証書遺言を普及させようというところにあるようです。

 作るのが比較的容易である反面、無効にもなりやすいのが自筆証書遺言の欠点になるわけですね。では一方、公正証書遺言を作成する上でのポイントはどこになりますか?

-公証人が関わることで、まず有効な遺言書が残せるのがメリットです。さらに遺言書は公証役場で保管しますから、紛失、改ざんの心配がありません。

したがって、相続時にトラブルが発生する可能性はきわめて低い、と言えます。

二人の証人が必要ですが、これは公証人等に頼むことで用意してもらえます。

公証人を含めて内容を第三者に知られてしまいますが、彼らには守秘義務がありますので漏洩の心配はありません。また、公証役場に手数料を払う必要がありますが、遺産総額が1億円以内ならば、大体三万円以内で収まります。

さらに、遺産相続でもめるのは遺言書のないケースが9割以上ですから、公正証書として有効な遺言書を作ることは親族間の争いを予防する意味でも好ましいといえます。

相続での争いは避けたいところです。

-公正証書遺言はまず行政書士や弁護士に相談した段階で、親族間で争いにならないようにヒアリング等を行って内容を詰めていきますので、そういった意味でも紛争の予防になります。

やはり、遺言書を作るのであれば公正証書のかたちがよいのでしょうか?

-内容が無効であったり、争いの予防にならない遺言を残すのはまずいので、公正証書が一番好ましいでしょう。

最近は自筆証書遺言の保管制度も始まりましたので、行政書士や弁護士に相談しながら自筆証書遺言の内容を確定させ、自書し、持参し、それを法務局で保管してもらうのも有効な対策の一つになって来ました。

ちなみに、自筆証書遺言の保管制度を利用した場合、遺言を作った人が内容を確認したり、保管後にあとから訂正(変更)したりすることは可能なのでしょうか?

-それは可能です。遺言者本人が保管されている遺言書の撤回・変更は自由にできます。

なるほど、自筆証書遺言の保管制度も活用しやすい仕組みとして、検討していく価値がありますね。本日はありがとうございました。

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