近年では高齢の夫婦も増えてきて、父親が亡くなった直後に母親も亡くなってしまう、もしくはその逆というケースも増えてきています。
そういった場合には、先に亡くなった方の相続手続きが終わらないうちに、その配偶者が亡くなってしまうということが起こります。
この記事では、このようなケースでの相続手続きに関する注意点を紹介します。
同時死亡のケース
相続においては、被相続人(亡くなった方)がどのような順番で亡くなったかが、相続手続きの内容に大きな影響を与えます。
ただ、例えば夫婦で同じ車に乗っていて事故にあってしまい、どちらが先に亡くなったかわからない、ということもあります。
このような場合は、夫婦は同時に死亡したものと推定されます(民法32条の二)。
したがって、夫婦間では相続は発生せず、夫婦ともに被相続人となり遺産は相続人(直系尊属、子、孫等)が相続します。
しかし、これは推定ですから、証拠を挙げて同時死亡をくつがえし、異時死亡とすることも出来ます。
異時死亡の場合に相続関係に複雑な問題が生じます。これが再転相続と呼ばれる問題です。めったに起こることではないですが、考えておくべき問題です。
再転相続のケース
再転相続とは、最初の相続における相続人が、「相続を放棄するか承認するかの熟慮期間中」(三か月、民法915条)に死亡し、次の相続人が相続する事例を言います。
一回目の相続を一次相続、二回目の相続を二次相続と呼びます。このような相続を再転相続と言い、二次相続人を再転相続人と言います。
分かりやすくいうと、「一回目の相続の熟慮期間中に二回目の相続が発生した事例」ということです。
再転相続の具体例
具体例を挙げましょう。
- 父親が亡くなって、母親が相続し、母親が熟慮期間中に死亡し、子供が相続した。
この場合、父親が一次被相続人、母親が一次相続人(二次被相続人)、子供が二次相続人です。
再転相続の場合、二次相続人は、一次相続と二次相続の両方について放棄承認を決めなければなりません。ただし、一次と二次のそれぞれについて自由に放棄・承認ができるわけではないことに注意が必要です。
一次相続と二次相続のどちらも承認すること・放棄することは問題なくできます。
例えば、子供が父親の再転相続人、母親の相続人である場合、子供は父親と母親の財産を両方を相続、あるいは両方とも相続放棄することは可能です。
しかし、再転相続人が二次相続を放棄し、一次相続のみを相続することはできません。なぜなら、二次相続を放棄すれば一次相続人としての地位がなくなり、一次相続を相続できなくなるからです。
先ほどの例では、子供が母親の相続を放棄すれば、父親の遺産を相続することは出来ません。
再転相続と相続放棄・承認の期間の問題
再転相続が生じると、「いつまでに相続放棄・承認をしなくてはいけないのか」という問題が生じます。
先述のように熟慮期間は三か月と定められていますが、これは、「相続開始を知ってから三か月」と理解されていますが、二次相続についてはこの通りで問題ありません。
ですが再転相続の場合には、二次相続人が、一次相続の発生を知らないという可能性もあります。
ではこの場合には一次相続の熟慮期間はどうなるのでしょうかと言いますと、一次相続については「一次相続の相続人となったことを知ってから三か月」が熟慮期間とされています。
再転相続では煩雑な相続手続きを短期間に進める必要が生じる
再転相続では、三か月という短い期間で、一次相続と二次相続について、承認するか放棄するかをきめなければならず、ただでさえ煩雑な相続手続きをしながら適切に判断するのは難しい問題です。
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