こんにちは。中村です。寒くなって来ましたね。コロナウイルスがますます活気づく季節だそうですが、私はめげずにがんばります。
今日は、公正証書遺言書の作成について具体的にお話しします。
1.公正証書遺言書の具体的作成手順
公正証書遺言の内容について復習しておきましょう。
公正証書遺言とは、遺言者が、(1)二人以上の証人の立ち会いのもとに (2)遺言の内容を公証人に口頭でつたえ、(3)それを公証人が筆記した後に遺言者に読み聞かせ、(4)遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後(5)遺言者が署名・押印する遺言書です(民法969条)。遺言者だけが行え代理人が行うことはできません。このことを念頭に置いておきましょう。
【1】財産目録の作成
(1) 財産目録とは遺言者の財産リストです。遺言書の作成の準備行為として遺言者の財産総額を確定させなければなりません。
遺産総額が分からなければ遺産分割は不可能だからです。したがって遺産分割を円滑に進めるためには、遺言者の財産の種類や金額・評価額等を記した書面すなわち財産目録を作成する必要があります。
(2) 財産の種類と調査方法を挙げて行きましょう。
① 預貯金・有価証券
預貯金は銀行等の通帳・預金証書を遺言者に提出してもらいますが、コピーでも構いません。この時遺言者に、預貯金は遺言書記載後も自由に使えることを伝える必要があります。遺言書に記載されればもう使えないと誤解するおそれがあるからです。
株式・国債等の有価証券はその数額や預託先を知らせてもらいます。
② 不動産
(I)法務局で登記簿謄本を収集する。
不動産は遺言者のすべての土地・建物について登記簿謄本を収集します。
この時、所有する建物周辺のいわゆる公衆用道路(私有地)の登記も調べてみる必要があります。その中に遺言者の所有地が含まれていることがあるからです。
(Ⅱ)都税事務所で名寄帳(なよせちょう)を収集する。
名寄帳とは遺言者が所有する不動産の一覧表です。市区町村単位で発行されるものですから、遺言者が他の市区町村にも不動産を所有している場合はその市区町村で発行してもらいます。
名寄帳を発行してもらう時は、あわせて固定資産評価証明書も発行してもらいます。相続登記の時に必要になります。
【2】相続人調査
(1) 相続人調査とは、遺言者の推定相続人が誰であるか調べることを言います。この時必要なのが戸籍謄本と除籍謄本です。
(2) 戸籍謄本は遺言者と記載されている全員との関係を証明するものです。推定相続人を確定させるため遺言者の出生時までさかのぼって調査します。
(3) 除籍謄本は聞きなれない言葉でしょうが、戸籍謄本に記載されている人が死亡、結婚、離婚、養子縁組、本籍地変更(転籍)等で戸籍から抜けて行き、ついに全員がいなくなった戸籍を言います。転籍、結婚養子縁組等では相続権は失いませんが、死亡の場合は推定相続人ではなくなりますからその人の「死亡」を知る正確な情報源です。
2.遺言書原案の作成
財産目録の作成と相続人調査が終われば、次にいよいよ遺言書の原案の作成に進みます。この際に必ず行うのが遺言者との面談です。
(1)遺言者との面談
① 遺言者本人と面談をして、ご本人の考えや要望を詳しく聞きます。
面談は原案作成上とても重要なことですから、絶対に聞き洩らしが無いように気をつけましょう。面談が複数回に及ぶ時はなおさらです。
面談の時にこちらから適切なアドバイス(遺留分等)をすることも忘れてはならないことです。
② 遺言者本人以外の人が面談に来ることがあります。この場合は後日必ず遺言者本人と面談する必要があります。
この場合は遺言書の(Ⅰ)作成意思の確認(Ⅱ)遺言能力の確認とを行う必要があるからです。どちらかでも欠けていれば、遺言書作成は不可能です。
(2)遺言書原案の作成と本人の承諾
① 遺言者と再面談を行います。原案を本人に読み聞かせ、内容が本人の意思であることを再度確認します。
② 遺言書原案書に遺言者本人の署名・押印をしてもらいます。
3.公証人との打ち合わせ
(1) 公正証書遺言は公証人が作成すると法定されています(民法969条)。 そこで遺言書原案を公所役場の公証人に提出し、内容が法律上適正なものかを公証人に検討してもらわなければなりません。
(2)公証役場へ行き、公証人との打ち合わせが必要です。この場合は遺言者が同行する必要はありません。尚、事前に電話で面会の予約をしておきます。公証人はとても多忙です。
(3)公証人と面会し遺言書原案と資料を提出します。そして表現方法などについて検討後、公正証書の作成日時を決めます。
(4)数日して公証人から手数料を知らせる連絡が入ります。
(5)公正証書の作成日時は速やかに遺言者に連絡します。このとき実印等の当日持参品も知らせておきます。
4.遺言公正証書作成
(1)公正証書作成の当日です。遺言者及び証人二人と一緒に公証役場に行きます。 このとき遺言者本人が実印・公証役場手数料を持参していることを確認します。
(2)公証人と面会します。公証人が公正証書原本を読み上げます。その後遺言者は公正証書正本をみて内容を確認します。確認が終われば公正証書作成は終了です。
(3)作成後、遺言者は公証人に手数料を支払います。公証人は遺言者に公正証書の正本を渡し、証人の一人に謄本を渡します。
5. 以上で公正証書遺言の具体的作成手順の説明を終わります。
次回は相続についてお話しします。