【行政書士インタビュー4】ペットと相続の問題~飼い主の亡き後もペットが平穏に暮らせるように~

 

本日はペットと相続について、お話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

-よろしくお願いいたします。

最近は子供のいない夫婦や、子供が独立して2人で生活する夫婦が、自分たちの死後にペットが変わりなく健やかに生活できるかという不安を抱えていることも多いようです。まずペットですが、法律的には相続でどのような扱いとなるのでしょうか?

-ペットは法律上は「動産」として扱われています。

相続人は自然人に限られていますから、「動産」であるペットは遺産相続は出来ません。

ペットは動産なのですね。これだけ家族のように扱われることが多い時代には、なんだか法律がマッチしていないようにも感じますが……。しかし、そうなるとペットを守るためにはどのような対策がとれるのでしょうか?

-まず負担付遺贈が考えられます。

これは、飼い主が死亡した後に、ペットの飼育を条件(負担)として、財産を相続人や第三者に贈与することです。遺言書にその旨を記載することで有効になります。

財産を相続または贈与する代わりに、ペットの世話を見てもらえるということですね。これだと、身近に頼めそうな人がいる場合には活用を検討できそうです。

-しかし、新しい飼い主に指定された相続人または第三者がペット好きで、飼育を承諾すれば問題ないのですが、そうでなければ、拒否することも出来ます。いきなり新しい飼い主に指定されても困る人もいるでしょう。

拒絶されてしまうと、ペットを残して亡くなってしまった人は意図した結果を得られず悲しいですね。

-拒否されないためには、飼い主は遺言書を書く前にあらかじめ相続人または第三者の承諾を得ておく必要がありますね。

ほかに、どのような対策が考えられますか?

-負担付死因贈与というものが考えられます。

これは、生前に飼い主が自分の死後、ペットの飼育を条件に新しい飼い主に財産を贈与する契約です。契約ですから飼い主と新しい飼い主との合意が必要です。

しかし、これにもふたつの問題点があります。

ひとつは、贈与額が相続人の遺留分を侵害する場合です。

兄弟姉妹以外の法定相続人(直系尊属、配偶者、子)は、相続人の全財産の一定の割合を相続することができます。

この「一定の割合」を遺留分といいますが、もし受贈者に贈与された財産が遺留分を越えているときは、相続人から遺留分侵害額請求権を行使され、ペットの飼育費が争いに巻き込まれる危険性があります。

これは先ほどの負担付遺贈にも当てはまります。

ふたつ目は、負担付死因贈与契約の効力は飼い主の死後に発生するということです。

もし飼い主が生前に病気になったり、認知症等でペットの飼育ができない状態になった場合はこの契約では対処できません。また遺言書は本人の死後に効力が発生しますから、負担付遺贈にも同じことが言えます。

どの制度を活用するにしてもペットが路頭に迷ってしまう危険がある程度は残ってしまうような気がします。

-民法上認められている負担付遺贈、負担付死因贈与契約では、飼い主の死後ペットの保護・飼育に適しているとは言えません。

そこで活用できるのが「ペット信託」と呼ばれるものです。

ペット信託とは、どのような制度なのでしょうか?

-信託契約というのは、A(委託者)が自分の財産をB(受託者)に託し、Bは一定の目的にしたがってその財産を管理・処分することを内容とするAB間の契約です。利益を受ける者がいれば受益者と呼ばれます。

いわゆるペット信託とは、信託契約をペット飼育に応用したものです。

例えば、飼い主Aが、今は元気だが、病気や死亡等でペットの世話が出来なくなってしまう将来に備え、新しい飼い主Bとの間で、ペットと飼育費を託す契約をいいます。

契約ですから、飼い主の生前からペットの世話をしてもらうことを定めることも出来ます。この場合Aが委託者・受益者と呼びBが受託者と呼ばれます。

飼い主はペットの世話を任せるのですから、その相手方(受託者)の選定は慎重にやらねばなりません。

まず候補として挙げられるのは家族です。一番信頼できる受託者でしょう。

次は友人でしょうか。いうまでもなく、ペット好きで、世話をするのをいとわない人を選ぶべきです。

飼い主が亡くなる前の段階で、ペットの世話ができない状態に陥ることは十分に考えられます。そんなとき、ペット信託という制度を活用できれば、残されたペットが困った状況に陥ることは防げる可能性が高いように感じました。

-そうですね。絶対ということはありませんが、少しでもペットが安心して暮らせるように、いろいろな選択肢を上手に活用したいところです。

なお、ペット信託というのは俗称で、法律上は民事信託の一種ですので、信託銀行や投資信託とはまた異なるお話なのでご注意ください。

専門家のサポートも受けながら、ペットにとって最適な方法を見つけられると良いですね。本日はありがとうございました。

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